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「学校のこの宿題の出し方ってどうですか?」
「この問題の解き方って学校の先生によってかわりますか?」
「学校の先生は子どもをわかってくれない…」
私は福島県郡山市で個人塾を経営しています。日々、聞こえてくるのはそんな親たちの行き場のない言葉。特にここ数年は、新型コロナウイルスの感染対策のために授業参観日やPTAの行事が激減し、「わが子が学校でどんなことを行っているのか分からない」と不安を募らせる保護者たちが増えています。
そればかりではありません、自分の子ども時代と比べて学習内容が変わっているにも関わらず、物価の高騰などで経済的な負担が増え、共働きで忙しい親たちは子どもとの会話が減っている現実もあります。そうした原因が重なり、わが子の学習の進捗状況が把握しづらい状況も生まれていると感じます。
そうした中で2020年からスタートしたのが「GIGAスクール構想」というもの。教育現場にもコンピューターの先端技術を導入しようと文部科学省が推進しているもので、先生だけでなく子どもたちもタブレット端末やパソコン、インターネットといった情報通信技術を使って学習効率を向上させようというものです。ICT教育ともいわれます。
「一体、どんな学び方をしているの?」と疑問に思った保護者もいるのではないでしょうか。そもそも、そんな教育が行われていることを知らない保護者もいるかもしれません。私も小学校に通う子どもがいますが、デジタル端末を使いこなす力は養われているものの、親たちが期待する「学力向上」や「自宅学習での活用」といった使い方はあまりされず、新たな不安の種になっているようにも感じます。
そんな疑問を解消しようと、今回、実際の教育現場に立つ2人の先生に話を聞きました。SNSを利用した情報発信や教員向けのオンラインイベントへの参加経験を持つ、会津ザベリオ学園の高橋尚幸副校長と菊地南央先生です。
「この問題の解き方って学校の先生によってかわりますか?」
「学校の先生は子どもをわかってくれない…」
私は福島県郡山市で個人塾を経営しています。日々、聞こえてくるのはそんな親たちの行き場のない言葉。特にここ数年は、新型コロナウイルスの感染対策のために授業参観日やPTAの行事が激減し、「わが子が学校でどんなことを行っているのか分からない」と不安を募らせる保護者たちが増えています。
そればかりではありません、自分の子ども時代と比べて学習内容が変わっているにも関わらず、物価の高騰などで経済的な負担が増え、共働きで忙しい親たちは子どもとの会話が減っている現実もあります。そうした原因が重なり、わが子の学習の進捗状況が把握しづらい状況も生まれていると感じます。
そうした中で2020年からスタートしたのが「GIGAスクール構想」というもの。教育現場にもコンピューターの先端技術を導入しようと文部科学省が推進しているもので、先生だけでなく子どもたちもタブレット端末やパソコン、インターネットといった情報通信技術を使って学習効率を向上させようというものです。ICT教育ともいわれます。
「一体、どんな学び方をしているの?」と疑問に思った保護者もいるのではないでしょうか。そもそも、そんな教育が行われていることを知らない保護者もいるかもしれません。私も小学校に通う子どもがいますが、デジタル端末を使いこなす力は養われているものの、親たちが期待する「学力向上」や「自宅学習での活用」といった使い方はあまりされず、新たな不安の種になっているようにも感じます。
そんな疑問を解消しようと、今回、実際の教育現場に立つ2人の先生に話を聞きました。SNSを利用した情報発信や教員向けのオンラインイベントへの参加経験を持つ、会津ザベリオ学園の高橋尚幸副校長と菊地南央先生です。
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■何のためのICT教育か?
まず、コロナ対策で加速したと思われる「教育現場でのICT化」について尋ねると、授業の内容が大きく変わったという実感はないとのこと。菊地先生は「デジタル端末を使って授業することができるようになりましたが、それで授業が改善するかというと、そう簡単ではないと思います。多くの学校では発表や調べる学習の“ツール”として取り入れたけれど、まだ有力な使い方が見つかっていないのかもしれません。保護者や先生の関心は高いですが、ICT機器の導入で、ただちに子どもの成績が伸びたという実感はありません。何のために、どう使うかを丁寧に考えていくことが大切です」と話します。福島県の場合、子どもが少ない僻地の学校で教育格差をなくそうと、以前からICT教育が取り入れられていました。その活用方法は、例えば都市部にある学校の教室とオンラインで繋ぐといった遠隔授業に対応するためやインターネットを利用した調べる学習に百科事典の代わりに使用するようなもので、学びを深めるための新しい教材としての活用ではないことが多いといいます。コロナ禍であっても、その“ツール”としての活用が多いようです。
では、今後はどのように変わっていくのでしょうか?
菊地先生は「一人一台端末を使用するICT教育は、“個別最適化”に活かされていくだろう」と話します。
“個別最適化”とは、子どもたち一人ひとりに合わせた学び方のこと。通常の授業はクラスにいる児童全員が1人の先生から同じ内容を学びます。しかし、クラスにいる児童全員が同じ理解度を得られるとは限りません。計算が不得意だったり、暗記が苦手だったり、児童によって学習の達成度は変わりテストの点数にも差が生まれます。そこで登場するのがICT教育による“個別最適化”です。AI(人工知能)が一人一人の苦手分野を分析し、最適な練習問題を準備してくれたり、児童の個性に応じたアプリ教材を使ったりなど次世代の教育スタイルとも言えます。誰一人取り残さない学びを実現させ、特別な支援が必要な子どもたちの可能性を広げることも期待されています。また、テスト問題の作成や採点など時間のかかる作業を効率化して教員の負担を軽減し、創造性を育む学びの場を作ることに多くの時間をかけられるようにとの期待もあります。
学習塾や一部の学校でもすでにそうした取り組みが始まっています。私の塾でもYouTube動画を見ることで繰り返し学習できる教材があります。他の学習塾では、英単語などを覚えるためにアプリを活用しているところもあり、子どもたちの理解力や学習環境に合わせて使うそうしたICT教育で、学力を伸ばそうという取り組みが増えつつあります。
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■ICT教育で教育格差がさらに広がる懸念も
しかし一方で、会津ザベリオ学園の先生方は「ICT機器の活用は必ずしも教育格差を埋めてくれるものではありません」と心配を口にします。ICT機器を活用した学習は、一見すると「いつでも、どこでも、誰もが学ぶことが出来る」ように感じられます。それによって教育格差は埋まるはずだ、と考える人もいるかもしれません。しかし、通信環境や保護者が関われる度合いなど、様々な要因で新たな格差が生じてしまう可能性もあるのです。
問題は家庭だけではありません。文部科学省のデータからは、不登校や校内暴力の増加、多様な児童への対応など学校が取り組むべき課題が増加していることがわかります。学校の先生方にICTを上手く活用して“個別最適化”の学びを進めてほしいと思う一方で、負担が増えている先生たちがICTを使いこなせるようになるまでには苦労も多く、まだまだ時間がかかると予想されます。しかし、新たな指導方法を導入するにあたり必要な研修や試行をする余裕が学校側に無いと、十分な指導ができず 結果クレームとして返ってくるという悪循環になってしまうのです。
課題も多いICT教育ですが、会津ザベリオ学園小学校では家庭との連携を図るため、今年度から保護者たちと教育について話し合う場を持つようにしたそうです。そこでは、学校教育のあり方や実践している内容を共有し、保護者同士の交流の場ともなっています。高橋副校長は「この取り組みで保護者と学校の関わりを増やしていくだけでなく、子どもたちの成長を一緒に見守っていけるようにすることが目標です。全国的にみても、福島県の会津に面白いことをやっている学校があるんだなと認識していただけたら」と話していました。
■「エリート教育」に舵を切る福島県で…
実は、今回の取材の中で多く出てきた言葉に「エリート教育」というフレーズがありました。福島県は県全体の学力向上をけん引するため、進学校の一つである県立安積高校を中高一貫校として質の高い教育を行うと発表しました。その発表があってから、私の経営する学習塾には中学受験のための小学生向け講座の問い合わせが増え続けています。子どもたちや保護者たちの意識も変わりつつあり、気にするのは「成績」であって、体験的な学習には関心を示さない層も出てきています。「これ、受験に出ますか?」といった、いままでの小学生からは聞かれなかった質問も受けるようになりました。また、「うちの子は組替えテストで上のクラスに行けますか?」「この学習時間で合格できますか?」といった、お受験をテーマにしたテレビドラマさながらの鬼気迫る保護者たちの様子に、学習塾講師の私も怖くなっています。
そのことを会津ザベリオ学園の先生方に話すと、「教育は成績を上げることだけではありません。子どもたちの一生涯の幸せを目指し、“個別最適化”で生徒一人一人の個性や社会性を伸ばすことは地域を支える人材を育てることにつながります。それは、いわゆるエリート教育と言われるようなものの、その先に繋がるものだと思います」と応えてくれました。そこには、地方の学校の教育者としてのある思いがありました。
「地方の私立小学校として気をつけるべきは、優秀な人材を首都圏や大都市へ送り出すことを目的としてはいけないのだということです。福島県は未曽有の大震災に見舞われ、コロナ禍もあり、誰も経験したことのない時代を建て直していかなければなりません。その時にこの地で学んだ子どもが進学で首都圏に出ていったとしても、また戻ってこられるような魅力を感じられる教育をしていく必要もあるんです。」
そのことを会津ザベリオ学園の先生方に話すと、「教育は成績を上げることだけではありません。子どもたちの一生涯の幸せを目指し、“個別最適化”で生徒一人一人の個性や社会性を伸ばすことは地域を支える人材を育てることにつながります。それは、いわゆるエリート教育と言われるようなものの、その先に繋がるものだと思います」と応えてくれました。そこには、地方の学校の教育者としてのある思いがありました。
「地方の私立小学校として気をつけるべきは、優秀な人材を首都圏や大都市へ送り出すことを目的としてはいけないのだということです。福島県は未曽有の大震災に見舞われ、コロナ禍もあり、誰も経験したことのない時代を建て直していかなければなりません。その時にこの地で学んだ子どもが進学で首都圏に出ていったとしても、また戻ってこられるような魅力を感じられる教育をしていく必要もあるんです。」
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■いま親たちに求められていることは?
コロナの影響で学校の教育現場と家庭との距離が離れる中で、先進的な教育がスタートしています。そうした中で、子どもたちを学校任せにはせずに、保護者たちもサポート役として介入していく必要があります。“ICT教育”や“個別最適化”は学校の教育現場でも試行錯誤の段階だからです。コロナ禍で学校に行く機会が少ない中でも、子どもたちと会話して様々なツールを使っていてどんなことを学んでいるのかを感じることも必要です。学校に直接聞きにくい場合は、学習塾など第三者の協力を仰ぐという方法もあります。子どもの教育に対して、みんなで協働することが大切だと感じます。教育現場と家庭をつなぐことにもスマートフォンのアプリなどICTを活用できるかもしれません。
そして、子どもたちから「この地域、自分の学校が好き!」と思ってもらえるような学びの機会を失わないよう、私たちが学んでいかなくてはならないなと思います。
【取材・執筆】ケイリーパートナーズ 佐藤宏美
※この記事はケイリーパートナーズと福島中央テレビの共同連携企画です。
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